・歯列の部分的な矯正はできますか??(その2)
答え部分的な歯列矯正治療でよく取り上げられるのは、審美的に目立つ前歯が多いです。しかし、奥歯(臼歯部)の部分矯正も大変意味があります。しっかりと力を入れて噛むためには、臼歯部に虫歯がなく、上下とも安定した歯列になっていることが必要です。ところが、例えば乳歯と永久歯の交換期に、永久歯が出てくるタイミングに若干の遅れがあったり、顎(あご)の骨の発育が遅れ気味になっていたりすると、永久歯が本来の位置よりも外側や内側に出たり、場合によっては横に倒れて出てきます。今回は、左下の一番奥の歯が横になっていた列です(1,2,3)。奥の4本の歯を用いて、横向きの歯を起こす装置がセットされました(4,5,6)。 ワイヤーを交換しつつ、4ヶ月たった状態(7,8)。 半年経過したところで、装置が変わりました(9,10,11)。 ワイヤーを調節しつつ、9ヶ月たちました(12,13)。 虫歯だった1つ手前の歯の後ろ側を治せるスペースができたので、インレーという小さな金属の修復物を入れることができました(14,15,16)。 現在は、最終的なかみあわせの調整をしつつ、仕上げをまっているところです。この列では、一番奥の歯が横に倒れていたために、1つ手前の歯との間に食べ物がつまりやすくなり、結局2本の歯が虫歯になってしまいました。 このような場合、一番奥の歯は抜歯することも多いのです。しかも1つ手前の歯は、かなり下の部分から虫歯になっていました。本来、虫歯はひどくなると歯の神経を除去して歯を保存しておくことになりますが、最悪の場合、奥の2本の歯を両方とも失うことも十分に考えられる状態でした。 今回の場合、特に審美的なものではありませんが、2本の歯を神経も除去することなく、両方とも守ることができました。そして何よりも普通の噛み合わせに戻せた意味は大きいと思われます。部分的な歯列矯正とはいえ、時間も費用もかかる治療に対して、患者さんが理解され、努力された一例です。
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